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淡海乃海 水面が揺れる時@小説家になろう

おすすめ度:★★★★★

淡海乃海 水面が揺れる時

作者:イスラーフィール

戦国時代、近江の国人領主家に男子が生まれた。名前は竹若丸。そして二歳で父を失う。その時から竹若丸の戦国サバイバルが始まった。竹若丸は生き残れるのか? 家を大きく出来るのか? 

 

淡海之海……読めます?「あふみのうみ」と読むらしい。あふみ=おうみ=近江なんですかね。
私は二週目に読んだときに、最初の最初にルビが振ってあることに気がついて始めて読めた。つまり、そして読まずに読んでいた。何を言っているのか分からないって?文字として認識してはいても音を認識していないことってありませんかね?
ちなみに「淡海」は湖のことで反対語は「潮海」で海のことらしい。淡海之海、つまり海のように大きい淡水の湖ということなんでしょう。

閑話休題

小説家になろうにおける代表的な戦国時代転生物の一つ。2018年5月28日現在も連載中。
山あり谷ありというには順調に物事が進んでいくのでストレス展開が苦手な人も安心して読めるだろう。
この作者の特徴として、何故、どうしてこうなったという歴史的な考察がなかなか巧みで、読みごたえがあり、またそれが楽しい。

以下、ネタバレあり

主人公は苦労人である。
敵対者は根切りにする、じわじわと謀略で攻め上げてくるなど。他所から見ればとてつもなく怖い存在である。が、奥向き、すなわち朽木家のなかでは対処したと思ったそばから、次から次へと降り掛かってくる問題に対処し続けていく苦労人である。
関わりの薄い人からは怖がられ、身内からは親しまれ、そんな相手からの認識のギャップから不本意なことになったりもする。戦国時代に生きているのに、どうにも営業活動をしているのではないかと思うようなことも多々ある。疲れたと奥さんや気の置けない側室に少し甘えるようなときもある。彼女達は数少ないそんな主人公の数少ない理解者だ。戦国大名としては弱みを他所には見せられないのだ。
三度繰り返す。主人公は苦労人である。
全体として転生ものにあるチートだ、俺Tueeeだ的な楽勝の空気はあるものの、理屈抜きでただ強いのようなものではない。
知識を以て、それを筋道立てて活かしていく。
それがこの作品の主人公であり、作者であるイスラフィール氏が見せてくれる魅力だろう。

現在は九州、奥州を覗いて全国統一を成し遂げつつあり、朝鮮・明に戦争を仕掛けたくないものの、経済状況からやらざるを得ないのではないかというような状態である。果たして、このまますんなりと作品が終わっていくのか、一波乱あるのか。イスラフィール氏の見せてくれる世界に期待である。

ちなみに書籍化もしているので店頭で見かけたら買ってみるのも良いのではないだろうか。

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