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僕と彼女と実弾兵器(アンティーク)@小説家になろう

おすすめ度:★★★★★

僕と彼女と実弾兵器(アンティーク)

作者:Gibson

***書籍版タイトル「銀河戦記の実弾兵器(アンティーク)」*** オーバーラップ文庫様より書籍化となりました。マールのあれが凄い。何がとは言いませんが。
http://over-lap.co.jp/narou/906866984/

 地球人、冷凍睡眠目覚めてみれば、そこは未来の銀河帝国

 孤独な宇宙船の中で見つけた謎の装置によって、BISHOPと呼ばれる電脳プログラム技術を身に着けた主人公。21世紀の常識を持つ彼が、妙に俗的な人工知能ロボットや、金にがめついメカニック少女、童貞仲間や賞金稼ぎといったクセのある仲間と共に、目指すは銀河の遥か故郷、太陽系第三惑星は地球。

 何をするにもまずは資金と、コープ(会社組織)を立ち上げ会社経営。大人のおもちゃの運送会社が、銀河規模での大戦争へ。

 エロ動画の搬送任務から、採掘、生産、交易。そして大規模艦隊戦までを描く、初心者にもとっつきやすいSFを目指して。

  21世紀に生きる現代人が、何故か宇宙船の中でコールドスリープに入っているところから始まるSF。ライトなノリで非常に読みやすい。

 この物語のキーワードは記憶だと思う。まず主人公にはなぜこの状況に陥ったのかという記憶が無い。また作中では行方知れずとなっている地球に、理由は分からないものの帰りたいという漠然とした使命感がある。なにより重要なものが作中に登場する装置、「オーバーライド」というこれは、記憶を上書きして新たな知識を植え付けるという便利なようでなかなか恐ろしいメカである。序盤で主人公に銀河標準語を取得させるために日本語を上書きされたという描写からその恐ろしさが想像できるだろうか。主人公はこれを度々使う選択肢を突きつけられる状況に陥る。21世紀に生きた記憶を対価に主人公は知識を得るのだ。オーバーライドという安易な学習装置が存在してしまうからこそ起こるその葛藤。「もしこんな技術があったのなら」という、まさにSFなようで非常に良い。

 非常に、非常に残念ながら更新は失速気味。物語の中で出てくる謎について、一部が明かされているところなのでとても気になる。この物語の結末をいつか見ることができったらなと願う。

 

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