暁文庫ログーネット小説等紹介ー

暁朔による本、ネット小説、文章などの読書記録及びレビュー

12ハロンのチクショー道@小説家になろう

おすすめ度:★★★★★

12ハロンのチクショー道

作者:野井ぷら

『何を望む?』
超常の存在の問いに男はバカ正直な欲望を答えてしまう。
あまりの色欲から、男は競走馬にされてしまった。
それは人間以上の厳しい競争社会。速くなければ生き残れない。
生き残るためにもがき、やがて掴んだ栄光と破滅。
だが、まだ彼の畜生道は終わっていなかった。

これは、競走馬にされてしまった男と、そんなでたらめな馬に出会ってしまった男達の熱い競馬物語。

 競馬が主題なので避けていませんか?それは勿体ない。なにはともあれぜひ読むべきです。

 競走馬に転生した男が再び転生して競走馬になり、その彼の引き起こすことに周りが振り回される競馬物語。本編は完結済み。2018年9月16日現在、本編のその後を描く番外編が連載中。

 私、スポ根って苦手なんです。どうにも入り込めないと言いますか。なのですけれど、この作品は非常に楽しめました。

 まず、登場人物一人一人のキャラクターが立っているのが良いです。物語の中心にいる馬はもちろん、彼の持ち主夫妻に調教師たち、彼に乗る三人の騎手やはたまた電子掲示板の住民たちまで、それぞれに個性を見ることができます。それぞれが役割を小説の中で生きていて、役に飲まれず描写されているのが非常に良いです。

 次に、物語の緩急が上手いです。笑いあり涙ありとは、この作品のためにあるでしょう。笑いを取るべきところで笑いを取り、泣かせるところで泣かせる。胸が熱くなるような場面も度々出てきます。正直レースの場面ではつい、泣かされました。チョロい?うるせいやい。

 ただ一つ、難点を上げるとするなら、エピローグですね。なんであんな描写にしてしまったのだろう。なんだか偉大な存在を出し、それが見る因果律すら打ち破った的な描写にしても、上手くまとめようとして失敗した感が出てしまいました。残念。いや、タイトルの畜生道を競馬のコースに掛けたのに気付かせるための装置なのかもしれませんが……。タイトル自体はそれだけ上手いと思うのでやっぱり蛇足感が出てしまうような。

 こういう作品はむしろ競馬好きや詳しい方でないからこそ、実情を知らずに楽しめるのかもしれません。ぜひ、食わず嫌いせずに読んでみてください。

 

12ハロンのチクショー道を読んで見る