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お前が神を殺したいなら、とあなたは言った@小説家になろう

おすすめ度:★★★★★

お前が神を殺したいなら、とあなたは言った

作者:ふじやま

「ナオキ、君に神を殺してほしいんだ」

 現代日本新興宗教の教祖として生計を立てていた神城ナオキは死んだ。そして彼はその罪ゆえに、無限の地獄へと送られることになった。
 だがなんの手違いか、はたまた陰謀か、彼は神々が実際に存在する異世界「エルマル」に送り込まれる。神とその神官たちが支配するこの世界において、神の加護も特殊な能力も持たぬまま、ただ「神を殺せ」という使命だけをその身に帯びて。

異世界に転移した現代日本人が、「本当の神」を信じその恩恵を世界にもたらす教団を駆逐し、自分の教団で世界を支配していく物語です。
※主人公はいわゆるチート的なものを一切使えません(展開がダルくなるので言語は初手から通じる方向性で)。
※各話タイトルの後ろの(+n日)は、1つ前の話からの時間経過を示します。
※登場人物はだいたいみんな死にます。人によっては鬱展開と感じるかもしれません(作者的には想定より全然そっち側に行かなかったなというのが所感です)

神とは、人の意思によって生かされている存在に過ぎないのではないか。

転生主人公が転生先の宗教世界の概念を覆していくお話。完結済。決してチートを連発していくような爽快感のあるようなお話ではない。現代的な思想の自由を持つ主人公が、その自由さを遺憾なく発揮して、思考に制限のあるものの、一種の安定した宗教的世界観に生きる現地住民達の世界を変質させていくのだ。それは非常に悪辣で、冷酷で、残忍な物語となっていく。これは一つの時代の歴史書なのだ。

非常に小難しい話が続いたりと、日本語を読み慣れない皆さんに対しては優しくない作品である。しかし、問答のやり取りや、宗教的な回心の瞬間などに興味を持った方はじっくり読んでほしい。ところどころに見え隠れする現代社会への皮肉チックなところもニヤニヤできる。

小説家になろう」掲載の作品としては異質で、読み応えのあるこの作品、おすすめです。