暁文庫ログーネット小説等紹介ー

暁朔による本、ネット小説、文章などの読書記録及びレビュー

Unnamed Memory@個人サイト

おすすめ度:★★★★★

Unnamed Memory

作者:藤村 由紀

魔法が当たり前のこの世界において、ここ数百年「魔女の時代」と呼ばれる程に
力ある5人の魔女が存在していた。
彼女たちは圧倒的な力を持ちながら歴史の影に潜み沈黙している。
人を越えた異質であるその力は人々に強く忌まれ、恐怖の対象でもあった。

幼い時に魔女の一人「沈黙の魔女」によって
子供が為せない呪詛をかけられたファルサス国の王子オスカーは
20歳になった時、最強の魔女と呼ばれる「青き月の魔女」ティナーシャの元に解呪を願いに訪れる。
それを切っ掛けに彼女を守護者として連れ帰ったオスカーは
契約が切れるまでの1年間、ティナーシャの過去に関わる因縁に、
そしてもっと大きな運命に巻き込まれて行くこととなる。

これは、彼と彼女の度重なる選択を描く、長い御伽噺である。

取り返しのつかないことがあった後、やり直せる手段を手にしたら?

俺様系王様と頑固系魔女の恋愛物語。といいつつ、かなり重厚なファンタジー世界の序章とも言えるお話。同じ世界観の作品に『Side Stories』、『Babel』等作者のサイトに多数の作品がある。

二人の関係を軸に世界を描いていく手法は見事。巡り巡った運命が行き着くラストが良い。そして他作品にまでどんどんと広がっていく世界観が私の好みに合っている。「もっと読ませてくれ!」となる作品。

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メガトンの修理屋@Arcadia

おすすめ度:★★★★☆

メガトンの修理屋

作者:taka234Me

初めましてtaka234Meと申します。本作品は洋ゲーRPGFallout3の二次創作小説です。
プレイ中、プレイ済みの方もいらっしゃると思いますが、ほぼメインクエストの流れで進行します。
グロ描写はあんまり無いと思いますが、出て来る場合はアナウンス致します。
ゲームプレイ時と違う、と思われる箇所もありますが、街の規模や描写を少し弄ってある場合もありますのでご了承ください。
進行に従ってメインクエストのネタバレが出て来る場合がありますのでご注意ください。
メインの舞台は、メガトンと呼ばれる街。主人公はそこに住んでいる修理屋です。 

原作通り「あいつ」はどんどん人外になっていく。

ベセスダ・ゲーム・スタジオのRPG、『Fallout 3』のオリジナル主人公二次創作。あの作品はプレイするだけでもプレイヤー各々の物語が綴られていくので、わざわざ小説の二次創作にもなりにくい気がする中でキラリと光る作品。

基本、原作通りに無茶苦茶なVault101の元住民が滅茶苦茶にするお話。笑いあり涙ありな冒険活劇と言えるかもしれない。

原作未プレイでも楽しめるとは思うが、原作をプレイ済みだとより楽しめる。

 

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お前が神を殺したいなら、とあなたは言った@小説家になろう

おすすめ度:★★★★★

お前が神を殺したいなら、とあなたは言った

作者:ふじやま

「ナオキ、君に神を殺してほしいんだ」

 現代日本新興宗教の教祖として生計を立てていた神城ナオキは死んだ。そして彼はその罪ゆえに、無限の地獄へと送られることになった。
 だがなんの手違いか、はたまた陰謀か、彼は神々が実際に存在する異世界「エルマル」に送り込まれる。神とその神官たちが支配するこの世界において、神の加護も特殊な能力も持たぬまま、ただ「神を殺せ」という使命だけをその身に帯びて。

異世界に転移した現代日本人が、「本当の神」を信じその恩恵を世界にもたらす教団を駆逐し、自分の教団で世界を支配していく物語です。
※主人公はいわゆるチート的なものを一切使えません(展開がダルくなるので言語は初手から通じる方向性で)。
※各話タイトルの後ろの(+n日)は、1つ前の話からの時間経過を示します。
※登場人物はだいたいみんな死にます。人によっては鬱展開と感じるかもしれません(作者的には想定より全然そっち側に行かなかったなというのが所感です)

神とは、人の意思によって生かされている存在に過ぎないのではないか。

転生主人公が転生先の宗教世界の概念を覆していくお話。完結済。決してチートを連発していくような爽快感のあるようなお話ではない。現代的な思想の自由を持つ主人公が、その自由さを遺憾なく発揮して、思考に制限のあるものの、一種の安定した宗教的世界観に生きる現地住民達の世界を変質させていくのだ。それは非常に悪辣で、冷酷で、残忍な物語となっていく。これは一つの時代の歴史書なのだ。

非常に小難しい話が続いたりと、日本語を読み慣れない皆さんに対しては優しくない作品である。しかし、問答のやり取りや、宗教的な回心の瞬間などに興味を持った方はじっくり読んでほしい。ところどころに見え隠れする現代社会への皮肉チックなところもニヤニヤできる。

小説家になろう」掲載の作品としては異質で、読み応えのあるこの作品、おすすめです。

Game of Vampire@ハーメルン

おすすめ度:★★★★★

Game of Vampire

作者:のみみず

レミリアとフランが従姉妹と遊ぶお話。19世紀末ぐらいにスタートです。
東方×ハリー・ポッターものです。特にハリー・ポッターはif要素強めなので注意。
東方要素は紅魔館組と魔法使い組が殆どのはず。たぶん。

 悠久の時を過ごすヴァンパイヤからみた魔法界のアレやコレや。

 J・K・ローリング作の『ハリーポッター』シリーズの世界に上海アリス幻樂団の『東方Project』のキャラクターを投入し、オリキャラを主役級の位置として描く二次創作。ハリポタ×東方の二次創作小説はいくつもあるものの、その中でもよく練られた作品だと思う。何よりうれしいのが更新頻度が高いこと。ハーメルンの作品はそれだけで評価が高くなりがち。

 ほぼ万能で問題もスパッと解決しがちで、神の視点もふんだんに使いがちなハリポタ二次創作界隈ではあるけれど、この作品のなかでは……まぁ、そこそこそういう面もあるけれど、気に障る描写では無いと思う。この気に障る障らないのさじ加減が難しいなかで、よくよく書かれている。

 ハリポタ世界の中で東方キャラクターが、元の設定を引き継ぎつつ、なおかつちゃんとハリポタ世界で生きているという描写ができており、読んでいて楽しい。

 東方のキャラ設定を知らずとも読めると思うけれど、知っているとより楽しめる作品。

 

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【R18】黄金と鍍金@ムーンライトノベルス

おすすめ度:★★★★☆

黄金と鍍金

作者:クレイン

不幸な結婚を原因にして色々なものを拗らせてしまった痛々しい女と、そんな女をなんとかしたいが素直になれないツンデレ美少年の、旅とお金と攻防と愛の話。設定ゆるめ。コメディシリアス入りまじり。
「普通の女の子になりたい」に出てくる前世世界でのお話です。

本編番外編共に完結済です。

2017年7月1日に一迅社様メリッサレーベルより書籍化して頂きました!

 自己完結系男装女とツンデレ美少年の恋愛物語。完結済。なお、R18。エッチな場面はそんなでもない。何かに目覚めるというのは無いと思う。多分。

 恋愛系のお話ではあるものの、同時に女性の権利のお話でもある。「基本的に女は男のもの」という価値観の世界で、主人公が男装をする中で見えてくる光景はなかなか悲劇的ではあるものの、そこからパートナーとの関係の中でしっかり自分を見つけ出していく様は良い。

 同作者の同じ世界線の作品に、『私と執事と下克上。』『捨て駒王女の軽い羽』がある。気に入ったら目を通してみるのも良いと思う。

 

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ドロホフ君とゆかいな仲間たち@ハーメルン

おすすめ度:★★★★★

ドロホフ君とゆかいな仲間たち

作者:ピューリタン

オスカー・ドロホフは魔法使いの監獄に収監された、危険な魔法使いの息子である。そんな彼にもホグワーツ魔法魔術学校の入学許可証が届いた。キングス・クロス駅の九と四分の三番線から魔法学校の行きの汽車が出る。魔法学校でオスカーを待ち受けていたのは、不思議な縁で結ばれた自分とは正反対の境遇の生徒たち、そして魔法界における未だ癒えぬ戦いの記憶だった。オスカーは魔法を通じて多くの人々と出会い、成長し、自分を含めた魔法界の過去と未来に向きあっていく。

 

J・K・ローリング著『ハリーポッター』シリーズの世界観を使ったオリジナル主人公二次創作。転生者、原作知識持ちは無し。主人公オスカー・ドロホフと彼の周りの人物たちの成長の物語。

原作のハリーポッター達のちょうど上の世代(つまりハリーが入学してくる前の年に卒業している世代)が舞台。オスカーを主人公とすることで、原作の展開を早めているようなもの。

しばらく読んでいると、鈍感系ハーレムものじゃないかと思うかもしれないが、そんな評価で済ませてしまうのはちょっと勿体無い。登場人物一人一人の思いがしっかり描かれた人間ドラマだと私は思う。

ちょうどこのレビューを書いている2018年10月07日の段階で主人公が己のトラウマと向き合っているところだ。少し前の彼とある少女との会話など、なかなか激しく、己に立ち向かうということの困難さを描いてくれていると思う。

これからどんな結末に持っていくのか、非常に楽しみな一作です。

 

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幼女戦記Tuez-les tous, Dieu reconnaitra les siens@Arcadia

おすすめ度:★★★★★

幼女戦記Tuez-les tous, Dieu reconnaitra les siens

作者:カルロ・ゼン

あの時代を、一人の政治家は以下のように評したという。

“戦争から煌きと魔術的な美がついに奪い取られてしまった。
将軍や、英雄が兵士たちと危険を分かち合いながら馬で戦場を駆け巡り、帝国の運命を決する。
そんなことはもう無くなった。
これからの英雄は安全で静かで物憂い事務室にいて書記官たちにとり囲まれて座る。
一方何千という兵士たちが電話一本で機械の力によって殺され、息の根を止められる。
これから先に起こる戦争は女性や子供や一般市民全体を殺すことになるだろう。
やがてそれぞれの国には、大規模で限界の無い一度発動されたら制御不可能となるような破壊のためのシステムを生み出すことになる。
人類は初めて自分たちを絶滅させることができる道具を手に入れた。

これこそが人類の栄光と苦労の全てが最後に到達した運命である。”

 勘違い系、TS転生の末期戦戦記物。タイトルに反して萌えてきな要素は薄め。局地戦で次々と勝利を上げていくのに、戦略的に敗北が続きじわじわと追い詰められていきつつも、最後まで勝ち続けていく主人公が素敵。

アニメ化も書籍化もしているので知っている人も多いと思うけれど、私はそうした媒体違いのものの中でArcadiaに投稿されたオリジナル版は二番目に好きだ。一番テンポが良く、読んでいて楽しい。書籍版も物語に厚みがでていてそれは良いのだけれども、なかなか終末に至らないのが難点。

 ちなみに一番気に入っているのは漫画版だ。なんだあの可愛い生き物は。

 

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